「狂牛病(海綿状脳症)というバイオハザード」
今頃になって、日本では狂牛病が大きな問題となっている。日本で最初に、狂牛病と認定された牛が見つかった牧場で、すべての牛が処分された。
今回の問題の中で、私が一番驚いたのは、「肉骨粉」という牛の肉や骨を砕いた粉が、牛のエサとして与えられていたという事実である。牛を育てるのに、牛を食わせているというのは、ちょっと恐ろしい。
本来、牛は草食動物であるので、牛の「肉骨粉」でなくても、動物性タンパク質を食べるという生き物ではない。成長を促進するとか、乳の出をよくするというような目的であれ、その行為はどうも機械的すぎるような気がする。
また、欧州でも、この「肉骨粉」が狂牛病の感染を大きくしたと言われている。
生物学の世界で、まだ私達の知らない細胞レベルのなんらかのセンサーがあるとすれば、自らが摂取したエサの中に、自分たちと同じDNAなりミトコンドリアをもつ物質が含まれていることを察知すると、拒絶反応をしてしまうはずである。
しかも本来、草食である牛にとっては、「共食い」という状態は本来あり得ない。ところが共食いと分かる状況が脳に到達した時点で、はじめてその事実を知り、共食いであることに気づいた牛の脳は、それ自身が退化し、狂牛病という病理現象に至ったのではないだろうか。
狂牛病は正確には「牛海綿状脳症」といい、最初、ウィルスか細菌が原因だと思っていたが、実は※プリオン蛋白質という異常タンパク質が原因だった。
普通、感染症はウイルス、細菌といった微生物により引き起こされる。今日プリオン病とされているものも、ウイルス感染症の一つと考えられていた。しかし、プリオン病の病原体は外から侵入する微生物ではなく、身体の中に産生される蛋白質が異常化したものという、まったく新しい概念で現在ではとらえられている。
ミトコンドリアに刷り込まれた意志は、太古の昔から延々と続いている。形を変えようと、味を変えようと、自分と同じDNAを摂取すれば、新種のバイオハザードが降りるということを、これからのバイオ・テクノロジーは心しておかなくてはならない。
ちなみに、狂牛病の牛の肉をバッチリ焼いても、その病原体であるプリオン蛋白は形を変えずに存在しており、それを食べるとしっかり感染してしまうわけで、殺菌とかワクチンというような発想では防御できないわけです。
とにかく、信頼できるものを食べたり、つけたり(化粧品)するためには、そのメーカーをよく知ることも大事だと思う。安けりゃイイ、、、では危ない危ない。
※プリオン蛋白
プリオン蛋白は、人では第20番染色体に存在するプリオン遺伝子が産生する糖蛋白であって、細胞膜に結合して存在する。プリオン遺伝子は哺乳動物から酵母にいたるまで見いだされている普通の遺伝子である。プリオン蛋白の機能はまだほとんど分かっていないが、ごく最近、運動を支配する神経細胞の維持や、睡眠調節にかかわっているらしいという成績が発表されている。
正常プリオンがなんらかのきっかけで異常プリオンに変わったり、外から異常プリオン(病原体)が接種されると、その異常プリオンは正常プリオンに働いて、それを異常プリオンに変えていく。その結果、異常プリオンがゆきだるま式に増加する。新しいタイプの増殖反応ともいえる。異常プリオンは蛋白分解酵素でこわれにくい性質を持っていて、神経細胞の中に蓄積する。その結果、神経細胞に空胞ができ、顕微鏡でみると海綿状にみえる。これが海綿状脳症という名前の由来である。