「アグリビジネス」
ファーストリテイリングが、ユニクロ商法を生かして農業ビジネスに参入するというニュースを見た。とりあえず、国内の農家で生産したものを全国展開するのだろうが、将来、中国で生産してそれを日本で売るスタイルになるといろいろな意味で凄いことになる。先日都内でとある科学者とこんな会話をしたばかりだったので驚いた。
・科学者「世界でいちばんおいしいトマトはどこで作れると思う?」
・わたし 「、、、?」
・科学者「実は、一番土壌の枯れたペルーで作ったトマトが世界一おいしいんだよ。」
実は、この農法(永田農法)を利用した作物をあのユニクロが売ろうとしている。
そして、この永田農法とは対極的な農法があることには驚かされる、、大手企業がアグリビジネスに参入すると、「売れるもの」を作る研究をドンドンするから、もっとすごい農法が今後出てくるかも知れない。
■ユニクロ方式で野菜販売へ ファーストリテイリング(朝日新聞)
カジュアル衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは8日、02年秋に高品質な野菜・果物の販売を始めると発表した。衣料品と同様、生産から流通、販売までを一貫して手がける。衣料品とは違う店舗を自前で展開して、当初は年間10億〜20億円の売上高を目指す。
野菜は、水や肥料を極限まで減らす農法で知られる株式会社、永田農業研究所(本社・東京、永田照喜治(てるきち)社長)から技術提供を受けて、公募した国内の契約農家に生産を委託する。販売品目や店舗数は未定だが、ユニクロの名は使わないという。
記者会見した柳井正社長は「農業は日本では遅れた産業だが、生産から販売までを手がけるユニクロ方式で活性化できる」と語った。また「(現状では)永田野菜は高級車のロールスロイス級だが、カローラのような大衆車にできる」と自信をみせた。
■永田農法(ながたのうほう)
「植物のもつ生命力を生かすことで、植物本来の個性を引きだそう」と導き出されたのが永田農法です。植物を敢えて厳しい環境下に置いて味の良いものを作る・・・野菜や穀物等、化学肥料にしろ自然の肥料にしろ十二分に与えてやると、早くブクブクと大きくはなるのだけど、コクや香りがない。永田農法は、肥料をほとんど使いません。よって、根を充分発達させ吸収力を強くするために、農薬・除草剤も極力使用しない農法。
■2つの農法(放任主義とスパルタ主義)
ドキュメンタリー映画「地球交響曲」(龍村仁監督、1992年製作)の中で、トマトの栽培について独自の方法を試みている野澤重雄さんという研究者が紹介されている。
彼はトマトを最初から最後まで水栽培で育てる。土の中では根の発達が妨げられるという理由からだ。水中には養分を十分に供給し、発育に応じて水槽を大きいものに換え、トマトが存分に根と枝を広げられるようにする。
映画はトマトの種1個が発芽したシーンから始まり、時が経つごとにその成長を追う。
小指の先ほどの小さな芽が、8カ月後には大きめの家一軒分はあろうかという大木に成長し、見る者を圧倒する。通常、1本のトマトの木になる実の数はせいぜい50〜60個。ところが映画に登場したその木は、驚くことに5000個の実をつけた。過去に野澤氏は13000個の実をならせたこともあるという。
ストレスがない状態で、最大限に成長の糧を与えてやると、生物はここまで伸びるという例である。
これとは対極的に永田農法というトマト栽培法がある。
上の野澤さんの方法とは正反対で、トマトの木を極限まで厳しい環境に置くやり方だ。養分や水をわざとギリギリ最小限だけしか与えず、土も石混じりの粗悪なものを使う。するとトマトは生き延びるために必死になって根を張り、栄養になるものは何でも取り込もうとする。そうしてたくましく強い木に成長していく。
結果、それは果物のように糖度が高く、肉の厚い実をつけるという。「永田のトマト」「フルーツトマト」として店先に並んでいる。
じつはトマトの原産地ペルーの土壌も水や養分が少ない環境だそうで、従ってこの栽培法は理にかなっているとの説明だった。方向性は同じだが、おそらく原産地よりも苛酷な条件を課しているのだろう。
上に紹介した最初の栽培法は、恵まれた環境だけを与えて自然に成長するにまかせる放任主義、2番目は獅子がわが子を千尋の谷に突き落すようなスパルタ主義といえる。子育てや、もの作りの方法論などに通じるところがありそうで面白いと思う。
昔から、放任主義とスパルタ主義はどちらが子供をより伸ばすのか、という問題がある。こういう問題には決着は永遠につかないだろう。実際スポーツでも、「幼い頃から自然にそれに親しんだ」系と「親やコーチが特訓して鍛え上げた」系の両方のタイプの選手がいて、どちらの実力が上かは一概に言えない(スポーツの場合、両者が必ずしも相反するとは限らないが)。
野澤トマトと永田トマトは異なった特徴を持つ。そもそも野澤氏はトマトの生命力そのものを研究対象にされており、食用として考えておられるわけではない(らしい)ので、永田農法と比較することさえ無意味かもしれない。それでも、普通の種子からスタートしたトマトが、その後の環境次第でこれほど違う道を歩むという事実は興味深い。
しかしながら、上の2つの方法には共通点があることに気づく。それはどちらもトマトに本来備わっている、自ら成長するパワーを引き出していることだ。